/工業科生徒のための教材化のこころみ/◇ホームページ制作ポリシー/
目 次 |
1 法に定められた個人情報とは(解説) |
サイト開設と個人情報保護 |
このページは、サイト開設を検討している工業科生徒のための ” Webサイト運営で扱う個人情報の管理のあり方 ” を取り上げ、探究型の学習材として利用できるよう構成しました。インターネットを多用するので、パソコンでの閲覧・学習をおすすめします。
個人情報の扱いは法律で定められており、違反者には刑事罰など、訴えられた場合は民事裁判に判断が委ねられます。現在はwebサイトには個人情報の扱いに関するポリシーを明示することが一般的です。本サイトでは個人情報情報を集める計画はありませんが、個人情報保護に関するポリシーを公開する準備をしています。
この学習では、一般的な同窓会のサイトの事例を取り上げ、開設で留意しておかなければならない個人情報保護に関する解説をします。
なお、本ページに記載の内容は個人情報に関する解説であって、個人情報に関する公式な政府や自治体の見解を示すものではありません。サイト掲載に関する個人情報の扱いに関しては法律事務所等でご確認ください。
1 法に定められた個人情報とは(解説) |
1 「個人情報保護法」(以下「保護法」)とはどんな法律でしょうか、何が定められているのでしょうか。
初めに法律を見てみましょう。国法は次のサイトで自由に閲覧ができ明示されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0000000057
第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。 一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(略)により特定の個人を識別することができるもの(略) 二 個人識別符号が含まれるもの(略) |
「保護法」第四章では「個人情報取扱事業者等の義務等 」を定め、第二節で「個人情報取扱事業者及び個人関連情報取扱事業者の義務」を定めています。例えば
第十八条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。 2 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。 |
です。これはスマホやPCのホームページで会員登録をするときなどでおなじみの表現です。
(不適正な利用の禁止)第十九条/(適正な取得)第二十条/(取得に際しての利用目的の通知等)第二十一条/(安全管理措置)第二十三条/(従業者の監督)第二十四条/(委託先の監督)第二十五条/(漏えい等の報告等)第二十六条/(第三者提供の制限)第二十七条/(適用除外)第五十七条①放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関、②著述を業として行う者、③宗教団体。④政治団体。 |
第二十七条で第三者提供について4つの適用除外が明示されています。同窓会名簿に関しては、同法5で、「同窓会が外部に管理を委託し、委託企業が個人データの提供を受ける場合は第三者に該当しない」扱いとしているので本人の同意がなくても個人データの提供が認められています。
2 webで政府や専門家の解説を見てみましょう。
個人情報保護委員会が令和5年12月に発行した以下のパンフに同窓会での個人情報保護の扱いがまとめられています。13ページ以降のQ&Aが役に立ちます。「自治会・同窓会等向け会員名簿 を作るときの 注意事項(令和5年12月発行)」
このパンフの4ページには ” 自治会は「個人情報取り扱い事業者」? ” に、同窓会も該当することが明記されています。
それ以外にも、
個人情報保護委員会➡ ” 個人情報を取り扱う件数が少ない事業者も個人情報取扱事業者に該当しますか ”
経済産業省➡ ” 企業のプライバシーガバナンスに関する実践例の整理 ”
政府広報オンライン➡ ”「個人情報保護法」をわかりやすく解説 個人情報の取扱いルールとは?”
などがあります。
「企業のプライバシーガバナンスに関する実践例の整理 」をみると、企業ではきびしい対応が求められていることが分かります。探究型学習としてホームページやwebを開設するときは個人情報保護に十分対応することが必要です。いろいろ調べて理解を深めましょう。
⚽探究せよꙬ➡①自分の個人情報を守る立場、②他者の個人情報を管理する立場、③他者の個人情報を利用して企業活動をする立場に分けて個人情報の扱い方にどのような違いがあるか表にまとめてみましょう。生徒は①の立場ですが、webを開設する場合は②、就職すれば③の立場になります。立場が変わると物事が違って見えます。
2 高校・大学等の同窓会の個人情報規定の例 |
きびしい個人情報保護ですが、私たちの身近なwebではどのような対応がなされているのでしょうか。調べてみましょう。
大学の同窓会は法人化されている場合がほとんどです。たとえば近くの山形大学工学部の同窓会”米沢工業会”は一般社団法人です。情報公開のメニューをクリックすると、役員名簿 、規程類 、理事選挙について 、代議員選挙について 、定時総会 が公開されています。規定類の中に個人情報保護規程が公開されています。
同会の神奈川支部のホームページを見ると【米沢工業会神奈川支部 個人情報保護方針】が公開されています。なおこの支部では【本サイトの目的と提供内容】が公開されガバナンスが行き届いていることが分かります。同窓会の望ましい運営状況の印象です。
さて、本県の工業高校はどうでしょうか。初めに経験豊富な鶴岡工業高校同窓会を調べてみましたが、サイトポリシーは見つけられませんでした。なお同校ホームページでは「第16回鶴工研究発表会」のyoutubeでの動画配信(2時間26分)が紹介されていました。卒業生にとって後輩の頑張りと学習成果を直接映像で見る良い機会を提供していると感じました。
4高校を統合して誕生して今年13年目を迎える酒田光陵高校の同窓会はどうでしょうか。学校のプライバシーポリシーがありましたが、同窓会はみつけられませんでした。
ホームページを本格稼働している米沢興譲館高校はどうでしょうか。ホームページのメニューにはないのですが、検索窓で検索すると「個人情報保護方針」がありました。上述の「1 法に定められた個人情報とは(解説)」で見た通りの編成となっています。同窓会のあるべき個人情報管理体制の例としてあげておきます(スマホで読みやいよう、HTML版をつくりました)。なおホームページ下端には「Copyright © 2024 米沢興譲館同窓会・令和版 All Rights Reserved」が明示されていました。著作権についての教材資料は次回以降にアップします。
⚽探究せよꙬ➡学校やPTA、市役所などのホームページで、個人情報の扱いがどのように明示されているか調べてみましょう。学校は公立と私立の違いについても調べてみましょう。(私立米沢中央高校では管轄裁判所まで明記してあります。なぜここまで必要なのでしょうか)
3 シンプルな会則と個人情報取り扱い例 |
これまで見てきたように、個人情報の扱いはその収集と活用方法により、法律により厳格に定められています。ここでは小規模な同窓会を想定し、以下の2つの要件を満たすシンプルな事例として埼玉大学化学同窓会の例を取り上げます。
①同窓会の規約に個人情報の扱いに関する簡単な記述がある。
②個人情報の収集と管理が簡潔に記載されている。
■埼玉大学化学同窓会の例➡(https://chem-alumni-saitama-u.org/会則等/)
会則の5に
「5.本会の本部に幹事3名を置く。庶務(卒業生名簿の作成と管理、総会等開催時の設営と運営等)と会計(本会の予算案作成、執行、会計報告等)の業務を行う。 」 |
とあり、庶務が卒業生名簿の作成と管理の担当責任者であることが明示されています。
これを受けて「個人情報の取り扱いについて」の運用規則を定め公開しています。個人名を●●●●で伏せて以下に示しました。原本は上述のURLを見てください。責任者の氏名、苦情申し立て先、利用制限などが明記されています。情報を集めるということは、集める側も住所、氏名、苦情受付窓口等をwebで公開することが求められることになります。
事業者名 |
埼玉大学化学同窓会 |
|---|---|
設立 |
平成14年3月1日 |
代表 |
会長 ●●●● |
住所 |
338-8570埼玉県さいたま市桜区下大久保255 |
苦情申し立て先 |
info(@マーク)chem-alumni-saitama-u.org |
利用目的(第十五条) |
同窓会の行事・報告等の連絡 |
収集する個人情報 |
氏名・旧姓・卒業年次または回・郵便番号・住所・自宅電話番号・携帯電話番号・主メールアドレス・予備メールアドレス |
個人情報管理責任者 |
個人情報管理責任者は代表が指名し、留任を妨げないものとします。 |
開示範囲(第二十三条) |
・法により必要または命令を受けた場合以外の第三者への開示を行いません。 |
個人情報の取扱者 |
同窓会に登録された個人情報は、個人情報管理責任者のみが取り扱えるものとします。 |
連絡停止ないし登録情報の削除 |
・同窓会は会員より連絡の停止ないし個人情報の削除を求められた場合は速やかに連絡の停止ないし個人情報の削除を行います。 |
⚽探究せよꙬ➡もし苦情申し立てがあった場合、どのように対応すればいいのだろうか。そのためには事前の準備として何が必要だろうか。
4 本サイトの個人情報保護に関するポリシーの検討 |
本サイトのような閲覧専用サイトは、調査研究を進める上で必要な共同研究者同志の連絡等のための個人情報を除き、閲覧者から個人情報を収集する必要はなく、また一般の個人あてにホームページ管理者からメールを送信することもないので、個人情報(この場合は個人情報のデジタル化されたデータ)そのものがありません。
このため大変シンプルな規約になることが想定されます。
ただここで注意すべきは掲載記事の個人情報、特に写真や動画です。この扱いまで明記したポリシーは見たことがありませんが、個人が識別できる場合は、本人の許諾がない掲載記事について、個人情報保護の観点から違反になります。
また著作権(肖像権)侵害にも問われることになります。ホームページ掲載の場合の著作権に関する学習は別途取り上げます。
5 このページのまとめ |
個人の情報はその個人に帰属するものであって他人が所有できないことは、現代では自明のこととして共有される人権そのものといえます。法の定めもありますが、個人情報は人格、そして個人の尊厳を表すものとして大切に扱われる必要があります。
⚽探究せよꙬ➡➡現行法では「個人情報は生存する個人に関する情報」となっていますが、故人になった場合の個人情報の扱いはどのようになるのでしょうか。